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Dewan Masud Karim 信号交差点における交通事故リスク評価モデルの改良とそのGISへの応用 |
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交通事故の約6割が交差点で発生しており、交差点における事故を削減することが急務である。そこで、信号交差点における事故の約30%を占め、死亡事故率の高い車両対歩行者事故、車両対自転車事故に焦点をあて、交差点環境要因(信号制御、中央分離帯幅など)と交通量で基準化した事故率との関係について分析した。分析結果で抽出された要因を基に、右折車対歩行者・自転車事故を対象とし、事故発生メカニズムを考慮した事故リスク分析モデルを構築した。構築されたモデルを用いて、右折車対歩行者・自転車事故多発交差点において、信号制御の改良や中央分離帯幅の縮小などの具体的な対策を提案し、対策による事故削減効果を示すことができた。 |
梅澤 忠雄 コンベンション都市戦略論 |
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情報化や世界化といった現代社会の変化に対応するために,世界の多くの都市がコンベンションという概念を軸に据え,都市の発展に成功している.本論文では,情報化と新ビジネス創造という2点において先進国の中で大きく出遅れてしまった我が国の経済と都市の再生のための都市計画上の具体的方法論として,「コンベンション都市戦略」が極めて有効であることを理論的に示した.そしてこのような認識に基づき,幕張メッセという世界水準のコンベンションセンターと,これを核とした幕張新都心を短時日で立ち上げることを計画した.その結果,幕張メッセという施設自体が新たな需要を創造しただけでなく,コンベンションセンター建設という公的プロジェクトがその数倍規模の新都心全体にわたる民間投資プロジェクトを誘発するなど,一連のプロジェクトは成功を収め,コンベンション都市戦略の有効性を実証することができた. |
加藤 浩徳 インフラ整備事業における合意形成プロセスへの市民関与の影響に関する分析 |
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本研究は、インフラ整備事業手続への市民の関与が、合意形成プロセスに与える影響について分析するものである。まず、市民による反対活動の実態を調査し、次に我が国および他国における合意形成の手続きに関する法制度を整理した上で、インフラ整備をめぐるコンフリクトの発生メカニズムを、関係主体の行動や環境条件等から明らかにした。分析結果から、インフラの便益・不便益の帰着特性に応じた合理的な法制度に改善していくこと、計画手続の地域間格差を解消すること、手続を定める法制度の適用基準を明確にすること、合意形成についての予算的制約を軽減させること、事業者同士が反対市民への対応等について情報交換すべきことを提案した。
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Gong Liying 交通ネットワークの耐震信頼性評価に向けた地震発生累積確率の社会的割引手法 |
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交通ネットワークの耐震信頼性を評価するときには、地震発生規模とその蓋然性をどのように想定するかが重要なポイントのひとつである。その際、特に地震発生確率は時間的に一律でなく、発生直後に低く、徐々に増大するという経過時間依存特性が存在することに考慮する必要がある。そこで本研究では、地震発生確率を前回の地震発生からの経過時間の関数として表現し、将来の異なる時点における発生事象のもたらす効果に対する社会的割引の考え方を込みにした、プロジェクト評価期間内に地震が発生する累積確率(これを累積地震暴露指標とよぶ)を提案し、その算出方法を示した。そして、日本国内の過去の地震発生履歴から、地震発生源を 100 グループに分類し、各グループの累積地震暴露指標を実際に算出した。評価期間 50 年・割引率6%の条件で試算すると、5つのグループで評価期間内の累積地震発生確率が 50 %を超える結果となった。 日本周辺の各地震発生源グループの 累積地震暴露指標( k g ) |
斉藤 功次 損失の増幅効果を考慮した費用便益分析に基づく道路高架橋の要求耐震性能決定方法 |
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大地震などによって生じるカタストロフィックな損失は、単純に金銭的に積み上げられた損害額によるのでは、損失の過小評価となる可能性がある。本研究は、この損失の増幅効果の存在可能性や集団的相互扶助システムによる緩和効果を理論的に示し、専門家等へのアンケート調査によって増幅効果を実際に計測し、それに基づいて仮想道路高架橋ネットワークの最適耐震性能の試算を行った。本研究の成果をまとめると、@損失の増幅効果とネットワークの影響を考慮することで,道路高架橋の耐震性能をアカウンタブルに決定できることを示したこと,A本研究で示した試算 の結果が耐震補強工事の実態と概ね合致し、さらに交通環境要因のよりきめ細かい考慮を可能にしたこと、の 2点である 。 ネットワーク構造や環境要因を変化させて 計算を 積み重ねれば、実用的な耐震性能マトリックスを作成することが可能となろう。 |
望月 篤 旅客およびエアラインの行動を考慮した階層的フライトネットワークの研究 |
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航空輸送においては規制緩和の進展等、激動期を迎えており、航空政策や空港整備計画を定量的に評価する必要性が高まっている。本研究においては自由競争が浸透しているアメリカ国内航空市場を対象とし、航空制度や空港整備状況といった航空市場環境および旅客需要を入力した場合に、@旅客のエアライン選択行動、Aエアラインの設定するフライトネットワークの形状および各路線の便数、B各空港への就航路線数や便数の集中の程度、などを出力とする、旅客とエアライン両者の行動を同時に表現可能なネットワーク配分モデルを構築した。そしてモデルの出力と実績値との比較により自由競争市場における本モデルの妥当性を確認したのち、モデルの適用例として空港拡張整備のシミュレーションを行い、各空港における乗継旅客数の変化や就航路線の変化の予測を行った。 |
ファン レ ビン 交通ネットワークにおける利用者便益のリンク別内訳および効用要因別内訳の計算法 |
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ランダム効用理論を前提として交通ネットワークの費用便益分析を行う際,通常 OD ペアごとに便益を計算する.しかし,享受した便益に基づく利用者負担の議論を行う際には,リンク別の便益計算方法が必要となる.そこで本研究では,リンクを実際に利用した人の平均効用(ユーザリンク平均費用)に着目し, OD ペアベースで計算された便益とリンクベースで計算された便益の総和が等しいなどの仮定から,ユーザリンク平均効用の近似計算法を定式化した.そして,提案した計算法に従って仮想ネットワーク上でのリンク改善効果を算出し,シミュレーション結果と比較して現状再現性がよいことを確認した.本研究の提案した計算法により,改善されたリンクだけでなく,その他のリンクの便益も算出が可能となり,また新設リンクの便益も計算が可能となった. 仮想ネットワーク上でのリンクの改善(左)とリンク別の便益(右)
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加藤 究 地方部の幹線道路の質的レベルが人々の生活パターンと満足感に与える影響 |
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地方部では車主体の生活が営まれており、道路整備によって人々の日常生活における効用が大きく改善される可能性がある。すなわち、道路整備の影響は直接の道路利用者だけでなく、周囲を取り巻く人々にも及び、相互・相乗効果を生み出していると考えられる。しかし、現在の交通量ベースの費用便益分析は、直接的な効果のみを計測するにとどまり、そうした相互・相乗効果を十分に計測していない。本研究では地方部の道路整備効果、とりわけ家族内における相互効果をインタビューやアンケートを通して調査し、ライフステージ別に整理した。その結果、母都市への速達性や公共交通のサービスレベルの向上に伴い家族の同居可能性や一緒に過ごせる時間が増大したり、安全な道路環境下での安心な子供の養育環境の実現などが、良好な家族関係の構築や定住化・地域の活性化の促進と密接な関係にあることがわかった。 |
亀井 憲樹 耐震補強投資等の防災投資を例とした『災害の生起確率と被害額』に関する社会的認知特性の分析・推定 |
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本研究では、発生確率は稀であるが甚大被害をもたらすような災害に対して実際に行われた防災投資から、このような災害に対する社会的なリスク認知特性を推定した。ここで、意志決定者は『認知された純便益』を最大にするように行動すると仮定し,道路高架橋の耐震補強投資、交通安全を目的とした信号機への投資、治水投資(堤防)についての実績をとりあげた。道路高架橋の耐震補強投資の分析からは、地震に対する社会的なリスク認知特性として, (i) どの都市でも地震の生起確率は同一と認知されている, (ii) 認知された損害額は実損害額の 2~3 倍である,ということがわかり,当研究室でこれまで行ってきた個人のリスク認知特性の分析や意志決定者へのアンケート調査の結果と同様の傾向を示した。 |
川久保 素子 都市と交通におけるコントロール政策とその社会的背景―ソウルと東京の比較― |
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ソウル市は東京 23 区と類似した都市規模にあり、交通渋滞などの同じ都市問題を抱えている一方で、開発制限区域による立地規制や、ロードプライシングなどの交通需要管理に見られるように、都市計画や交通計画において実現できているコントロール政策が多い。そこで本研究では、文献調査やソウル市でのインタビュー調査により、コントロール政策の実現度の違いを明らかにし、違いをもたらす要因を考察した。その結果、大統領制や準戦時体制などの政治的要因や、道路中心のソウルと鉄道中心の東京という都市発展の歴史的経緯の違い、高度成長期が遅くより急激であったため先進的な政策をとりやすかった、などの要因があげられた。また、分野によっては日本より実現できていないコントロール政策が存在することもわかった。 南山トンネルにおけるロードプライシング |
越胡 淳 事故リスク分析モデルの適用および特異交差点における事故要因分析 |
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交通事故件数が過去最悪を更新しつづける中、当研究室においては、信号交差点における事故率算定モデルが構築されてきた。本研究ではまず、モデルの移転性を検証するために、東京都内の事故多発交差点 79 地点に対してモデルを適用し、その結果、約 60% のレッグの事故件数についてはモデルで説明可能であるが、 3 割のレッグではモデルが過小推計であった。そこで、過小推計レッグを多く含む交差点に対して個別に考察を行い、モデルに含まれていない 11 の事故要因を抽出した。さらにそれらの要因を既存モデルに取りこむべきものと個別に対応すべきものに分類し、交通安全対策においては包括的な分析と個別現地対応のバランスが必要であることを示した。
図 . 対象とした東京都内事故多発地点 79 地点
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小林 里紗 利用者の利便性から見た非常時の運転整理ダイヤの評価 |
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<図:利用者の総不効用の比較> |
末松 祐介 アンケート調査における質問表現の違いによって生じるバイアスの評価 |
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公共事業などに関して市民の意見を聞いたアンケートの結果には、質問表現の違いなどによってバラツキ(バイアス)が生じる。そこで、本研究では特に「質問表現の違いから生じるバイアス」に着目し、将来的にはバイアスの補正方法を提案できるように、まずその特性の把握を試みた。「世間に同調する傾向」など 8 種類のバイアスを抽出できるようなアンケートを作成して約 150 名を対象に調査を行い、下表のような結果を得た。たとえば、 2 項目を比較する際に一方よりももう一方の印象が良くなるような表現をすると、誘導された選択肢と反対の回答をする者が多くなるという項目順序バイアスや、数字の選択肢から解答を選ぶ際に選択肢の位置が被験者の選択に影響を与えるという解答推測バイアスが観測された。 ※ ◎○△× : 各検定の結果により、質問内容に依らず バイアスが現れたか、を相対的に評価したもの |
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