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Ian Espada Cerebrado 大規模交通プロジェクトにおける公共/民間セクターの効率的な連携のための契約設計 |
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現在,特に発展途上国において, LRT や高速道路といった交通需要の増加に対応するための大規模な交通インフラ投資プロジェクトを遂行する際に,政府財源の確保が困難なことが大きな制約となっている.このような問題を解決するために,公共インフラへの投資プロジェクトに対して民間資本を導入するという, Public/Private Partnership ( P/PP )の枠組が提案されている.しかしながら,たとえ民間資本が参加したとしても,多くの国において政府財源の制約はなお問題となっており,政府の支出を最小に抑えながらプロジェクトが遂行できるような,効率的な P/PP 契約の枠組みを設計することが重要である.そこで本研究は,リスク中立的である公共セクターとリスク回避的である民間企業間における代理人契約モデルを,完全情報時と情報の非対称性の存在時それぞれについて構築し,両者が損失と利益をともに共有するような枠組みが望ましいなどの, P/PP 契約の枠組みの設計に関する有用な知見を得た.また,マクロ的な視点とミクロ的な視点の双方からケーススタディを行い,本研究で得られた知見の妥当性を検証した. |
坂本 誠 大規模小売店舗出店に着目した都市政策における地方自治体間の連携に関する研究 |
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近年,既存の市町村規模を越えた商圏を設定する大規模小売店舗の進出が目立つようになってきた.しかし,実状に合わせた商圏設定がなされていたのか,あるいは行政側の広域的な対応ができていたのかという疑問がある.本研究では2事例の実態調査を行い,1)制度で定められる商圏設定が不適切なため,実際の利害関係者と合意形成の場に参加できる関係者とが一致しない場合があること,2)制度で定められる広域的な調整の場が十分に機能せず,また上位自治体である都道府県も調整に消極的であるため,十分な利害調整がなされていない可能性があること,を明らかとした. |
大原 大志 地方部の高速道路が人々のモビリティに及ぼす影響 −地方幹線道路はいかにあるべきか? |
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地方幹線道路は地方部の生活圏モビリティ向上に対して重要な役割を担うべきものであるが,その根幹をなす高速道路は,主たるユーザーを長距離トリップとしており,インターチェンジ間隔が長くて都市中心部を迂回する傾向が強い.その結果,有料制とも相俟って,短・中距離トリップの利用率は非常に低く,生活圏モビリティの向上に十分貢献できているとは必ずしもいえない.そこで本研究は,岩手県盛岡市とドイツのレーゲンスブルク市において地方部の生活圏モビリティに関する着地調査を行い,高速道路パフォーマンスの違いが人々のモビリティや利用意識に与える影響を確認し,さらに岩手県を対象に交通発生・経路選択・目的地選択の 3 段階の交通需要予測モデルを構築して,高速道路施策によりアクセス性が向上した場合の効果の検討を行った.その結果, IC を都心の直近に新設する施策が効果的であることや,一方では料金の短距離区間割引だけでは地域振興に十分貢献するには至らないこと,などが分かった.
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木村 歩 地区型共同集配配送における各関係主体の行動メカニズムに関する研究 |
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都市内において集配トラックによって引き起こされる交通渋滞や環境負荷が大きな問題となっている.その問題を解決する方策の 1 つとして地区型共同集配送が福岡天神地区などで導入されているが,実際には運営のうまくいかないケースが多く,本質的な検討課題が未解決である.そこで本研究では各関係主体を包括した地区型共同集配送事業モデルを構築し,そのモデルを用いて数値シミュレーションを行うことで地区型共同集配送の特性を把握することを試みた.その結果,現状の共同集配システムではその社会的効果は限定的で,なおかつ共同集配会社の採算確保も難しいことや,各運送事業者がドライバーを通して個別に営業活動を行っていることで囚人のジレンマ的状態が発生し,共同集配送システムが進展しないこと,などが示された. |
武貞 聡 アメリカにおけるTax Increment Financing (TIF)による都市再開発の資金調達方策 |
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国や地方自治体などの財政状況も苦しい中,都市再開発を促進するためのインセンティブなど新たな事業形式の導入が必要とされている.一方,我が国と同じような状況が約 20 年前に見られた米国では, Tax Increment Financing (TIF :租税増収財源債 ) という制度を導入することで都市再開発の財源を確保し,中心市街地の再生を実現させた.本研究では米国における TIF の仕組み,特徴を明らかにすることを目的として、現地でのインタビュー調査や文献収集を行った.その結果、主に都市規模の違いに応じて TIF の施行プロセス,開発目的,開発対象,資金調達方法,資金の使途,普及の背景等が異なることがわかった.また, Chicago 市の TIF 事例を分析することにより,開発タイプによる経済効果の違いをあきらかにし, TIF の二つの政策意図「民間投資刺激策」,「都市更新の推進策」を示した. |
中島 義全 鉄道利用における運賃支払感覚の差異と支払方法選択行動に関する基礎的研究 |
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近年,交通サービスでは,多様な料金支払方法が提供されており,特に現金を取扱わない支払方式が普及しつつある.ここで,現金を取扱わない支払方法には,カード破産に見られるように,費用意識を希薄にさせる効果が考えられる.そこで,まず,東京圏の私事目的の鉄道経路選択行動を対象に,利用者の運賃に対する感度が支払方法によって異なるという仮説を立て,その検証を行った.その結果,支払方法の異なる乗車区間の間では,運賃感度が異なる可能性が明らかとなった.次に,各種支払方法の選択行動をモデル化した.ここでは,利用者は,日常的な経路選択を考慮しながら中長期的な視点からチケット種別を選択するという,2段階の選択行動を仮定した.モデル推定を行ったのち,モデルを用いて,カード利用環境が変化したときの利用者行動の変化を感度分析によって示した.
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鳩山 紀一郎 歩行者の心理に視点をおいた高齢化社会に対応した信号交差点の設計・制御法 |
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大きな信号交差点におけるわが国のサイクルタイムは、歩行者の横断時間確保の原則などから比較的長めに設定されており、この傾向は高齢化に伴い一層強まる可能性がある。しかし、待ち時間や環境への負荷を考えると、これが望ましいこととは限らない。従って、今後はサイクルタイムが短く且つ高齢者を含む歩行者が安心感を得られる交差点を、横断歩道構造などハード面及び信号現示方式などソフト面で工夫することにより、実現していくことが望まれる。そしてそのためには、歩行者の横断行動時における肉体的、心理的特性を充分に把握しておく必要がある。そこで本研究では、バーチャルリアリティを用いた自由度の高い実験空間を整備し、心拍変動や歩行速度、主観的評価を測定することで歩行者の心理生理特性を把握する室内実験を行った。分析の結果からは、横断歩道の赤時間及び青時間を歩行者の視点から短縮できる可能性が低くないことが示唆された 。
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Kerati Kijmanawat 多段階階層ネットワークの計画方法 −多段階階層ネットワークにおける最適ハブ配置モデル(CM-GATSモデル)の構築 |
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近年のグローバル化の進行によって,物流・通信などの交通ネットワークが巨大化・複雑化し,規模の経済性に優れるハブ&スポーク型の階層的輸送システムがますます進展しつつある.そこで本研究は,多段階階層ネットワークの最適解をヒューリスティックに求める解法を構築することを目的とした.具体的には, GA とタブー・サーチを組み合わせた M-GATS モデルを提案した.さらに,より大きなネットワークに適用するために,ノードをいくつかのクラスターに分割し,クラスターごとに M-GATS モデルを適用するという,多段階的な解法( CM-GATS モデル)を考案し,理想的なネットワークにおいて解析解と比較することによりその有効性を立証した.本モデルにより, 2000 ノード以上の問題においても最適な多段階階層ネットワークを出力することが可能になった.なお,本論文は当専攻において古市公威賞を受賞した. |
湯野 大介 アンティグア・バブーダのインフラとインフォマティクス戦略 |
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カリブ海にうかぶアンティグア・バブーダは,小国ながら免税政策とインフラ整備・インフォマティクス戦略を組み合わせて,オフショア・ゲーミング分野で世界最大のシェアを占めるという大変な成功を収め,免許料や賭博収益税の導入で税収が大幅に増加した.本研究はこの成功要因を解明すべく,現地調査によって同国の政策を分析し,経済特区での柔軟性の要因,通信インフラの整備過程,インフォマティクス戦略等におけるエッセンスを抽出した.その結果,ゲーミング産業という将来の成長産業に着目する先見性や,既存の概念・制度にとらわれずにインターネット賭博という業態を世界でのいち早く合法化したり,経済特区内で IT 産業のみを税制優遇するといった柔軟性,早期の光ファイバー敷設など産業を支える情報インフラを整えるスピード,資金洗浄・詐欺行為など不安定要因を回避するための戦略眼を持った法整備,などがアンティグア・バブーダの成功のポイントとしてあげられた.これらの要素は,現在の日本に足りないものが多く,得られる知見は多いと考えられる. |
岩井 俊英 共分散構造モデルによる意識構造に基づいたセグメンテーション |
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近年人々の価値観は多様化しており,交通政策や施策に対する人々の反応は一様でなく,その成果が予想を下回ることも少なくない.そこで本研究では,市民参加を促進するための施策を検討するケースを例に,人々を意識構造に基づいてセグメンテーションする方法を考案した.まず,意識調査の結果を基に代替的な意識構造モデルを複数構築する.そして,各個人がどのモデルに最も近いかという観点から算出した指標(影響関数等)を基に |
田仲 洋之 鉄道の降雨災害に対する斜面防災投資の意思決定における認知特性の計測 |
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事故・災害リスクへの人間の評価は,当該リスクの特性により異なる.特に,甚大被害が発生するリスクや稀少頻度のものでは,不確実性・不可逆性などが存在するため,機械的に計算された生起頻度や被害額に対する人間の評価特性は,相当程度に偏差を持つと予想される.本研究は鉄道の降雨災害に対する斜面投資を例に,期待被害軽減便益算出モデルを構築し,その結果を防災投資実績と比較することで,現状の防災投資における意思決定行動分析を試みた. その結果,@全体としては分散的に投資が行われているがその進捗状況は便益の大きさによること,A便益の小さい線区では支社単位のバランスを考慮して投資がなされていること,などがわかった. |
内藤 哲司 道路整備事業における周辺住民の反対活動の特性―高速横浜環状南線を事例としてー |
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道路整備事業においてはしばしば周辺住民の合意を得られず,大きな反対運動が発生している.本研究では,事例として高速横浜環状南線を取り上げ,反対活動に関するアンケート調査等を実施した.反対活動として,意見書の提出等の意思表明,反対同盟の結成等の組織拡大,抗議行動等の相手の説得という3種類の行動の組み合わせを考え,反対者の合理的行動を仮定して,それらを説明会の善し悪し,他者の行動等により説明するモデルを構築した. |
中西 宣仁 混雑空港の発着枠配分方法に関する基礎的研究 |
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近年,主要空港の混雑現象が顕著であり,空港発着枠の合理的な配分が重要な課題とされる.発着枠の配分方法は各種あるが,現在は優先評価方式が採用されている.一方,競争入札方式も提案され,その有用性が指摘されているがその効果については必ずしも明確でない.そこで本研究では,混雑空港を対象に,スロットならびにスケジュールの決定に,航空会社による競争入札システムを導入した場合の決定メカニズムをモデル化した. |
本田 卓 地方部の自動車交通行動分析に向けたGPSデータの利用可能性 |
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現在,地方部での交通行動調査は都市部程十分に行われていない.特に,地方部での主な交通手段である自動車に注目すると,従来の記述式調査では精度が悪く作業量が膨大であるという問題があった.そこで,記憶への依存が少なく経路の詳細も把握可能な GPS の自動車交通行動分析への応用可能性を探るべく研究を行った.その結果,利用者の生活パターンや経路の変動,旅行速度変化等の把握が可能であり,機器の技術的向上とプライバシー問題の解決がなされれば,アンケート調査の代替としては十分通用し得ることがわかった.しかし,経路情報は地域で精度が異なるため,データを有効に活用するには調査範囲などを十分に検討する必要がある. |
Edy Purwono 住民の防災コミュニティ活動を取り入れた大地震時の緊急行動シミュレーションの開発 |
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密集市街地での防災施策はポケットパークの整備など小さな街区レベルでの施策が多く,町丁目や自治体単位など出力される従来の地震危険度解析や被害想定手法ではそれらの施策の評価は難しい.そこで本研究では,ひとつひとつの建物や街路単位での,地震発生時におけるひとりひとりの住民の被災状態や緊急行動が表現できる,ミクロな視点に立った地震時シミュレータのプロトタイプを開発した.ここでは,建物・人々の状況が状態別に示され,なおかつその変化や人々の移動が時系列的に示される.また最終的には,建物被害,避難者数,避難しない人数,行方不明者数,重軽傷者数,死者数などが得られる.本シミュレータを,実際の木造密集市街地に適用したところ,建築物の下敷きにより安否確認できない人が多いこと,ポケットパークが整備されても街路閉塞により機能しない場合があることなど密集地での災害危険性が確認できた。 |
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